私には子育てのテーマがある。
それは『北風と太陽』だ。有名なイソップ童話のひとつである。
対象相手に対して、厳罰的・強制的に対応するよりも、寛容的かつ自主性を重んじるほうが、最終的に良い結果を招くという趣旨の物語だ。
私の母は、まさに“北風”タイプ。
大きな声、過激な言葉、そして暴力でねじ伏せるのだ。確かにこの方法は、自分より立場の弱い子どもにとっては効果てきめんである。相手に反論や抵抗の隙を与えないし、即効性がある。子どもを黙らせたい時には、かなり有効だ。
しかしながら、この方法には重大な副作用がある。
それは、効果は短時間であること。そして将来的に信頼関係を失うということである。
上手いこと子どもを黙らせ、自分の思い通りの結果に導いたように見えるが、子どもに刻まれる記憶は永遠に残り、遺恨を生む。
その一方“太陽”タイプの子育ては、即効性はなく、親側の忍耐と粘り強さが必要だ。
しかし、子どもを信じてあたたかく見守り、子ども自身に選択肢を与え、主体性を重んじる親の姿勢は、子どもに無限の選択肢を与えることができる。その結果、子どもは自由に自分の人生を切り開き、のびのび成長できるのだ。
そして何より大きな収穫は、親子の信頼関係が深められることだ。心配や不安から、親はつい口を出したくなることがたくさんある。それでも子どもを信じ、可能な限り傾聴と受容に徹したい。
子どもが将来“自然に”親へ感謝できるようになるのは、決して“自然”ではないと私は思う。
大人に至るまでの道のりで、いかに“太陽”を浴びてきたか…ではなかろうか。
容易なことではないが、私はこれからも子どもの太陽でありたい。